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#設計支援
女川原子力発電所新規制基準適合性審査におけるGETFLOWSを用いた地下水位評価
プロジェクトの背景
東北電力女川原子力発電所第2号機における新規制基準適合性審査[i]では、敷地内および周辺地盤における地下水の緻密な挙動制御・管理が重要な課題となりました。特に、原子炉建屋(設計地盤高さ O.P.+14.8 m エリア)や制御建屋など安全上重要な構造物の周囲では、地下水位の上昇による構造物への揚圧力(浮力)の低減や建屋浸水の防止などを目的として、地下水位低下設備(サブドレン設備)が設置されています。この地下水位低下設備の設置効果を考慮した設計用地下水位の妥当性を科学的に検証・設定するため、新規制基準のもとで3次元の精密な「浸透流解析」が求められました。女川原発が立地する地質・地形構造、大規模な敷地造成による改変、および隣接する海域との動的な相互作用をシームレスかつ高精度に再現するため、統合型水循環解析モデルである「GETFLOWS」を用いた評価が実施されました。
解析コード(GETFLOWS)の選定理由
本プロジェクトにおいて、統合型水循環シミュレータ「GETFLOWS」が選定された理由は以下の技術的特徴によるものです。
数学的・物理的妥当性の検証(V&V)
解析コード自体が数学的・物理的に正しく計算されることについて、多様な標準問題や既往の検証例(V&V: Verification and Validation)を通して信頼性が十分に確認されています。
表流水・地下水の完全連成解析機能
降水が地表面を流動するプロセス(表流水)と、地中へと浸透して地下水流動となるプロセスをシームレスに結合し、一体的に同時計算することが可能です。これにより、起伏の激しい女川サイトの地形における降雨応答を自然かつ高精度に再現できます。
3次元地質構造や構造物の精密な再現性
複雑な地質構造、造成に伴う盛土・切土境界、地下建屋や暗渠ドレーンといった大規模な地中構造物を3次元グリッド上に忠実にモデリングできます。
大規模計算に対応する並列化処理機能
敷地内外の広大な領域を緻密な差分格子で離散化するため、数百万から数千万グリッド規模の膨大な線形方程式を解く必要があります。GETFLOWSは、複数CPUを用いた並列計算に対応しており、計算負荷の大きな大規模シミュレーションを高速かつ実用的な時間内で処理することが可能です。
プロジェクトのアプローチ
本プロジェクトでは、長谷川 [ii](2006)により解説されている米国ASTMガイドラインの「敷地特有の課題に対する地下水流動モデル適用のための標準ガイド(ASTM D5447)」を参考に、以下の7つのプロセスからなる系統的なアプローチが構築され、設計用地下水位の評価・設定が行われています。
目的の設定
本解析の目的は「耐震設計や液状化影響検討で直接参照する設計用地下水位を科学的に評価・設定すること」と定義されています。さらに、安全設計の観点から「液状化影響検討対象施設を幅広く抽出するため、地下水位を高めに(保守的に)評価する」という評価方針が設定されています。
概念モデルの作成(データ収集を含む)
敷地および周辺の地下水流動システムを簡略化・概念化した「概念モデル」が作成されています。これに伴い、気象データ(降水量)、地形標高データ、地質調査データ(ボーリング柱状図、岩盤分類等)、水理試験データ(透水試験結果等)、地中人工構造物(建屋や既設ドレーン等のレイアウト)など、モデル構築に必要な多角的な情報が網羅的に収集・整理されています。
コンピュータコードの選択
概念モデルで定義された複雑な水理地質構造や、地点特有の境界条件、および要求される解析機能を考慮し、適切な解析コードの選定が行われています。その結果、表流水と地下水の完全連成解析、並列化による大規模計算、妥当性の高い検証実績(V&V)、および既設や新設ドレーン機能を再現できる機能要件を満たす「GETFLOWS」が選定されています。
モデルの構築
概念モデルおよび選定された解析コードに基づき、敷地外の分水嶺から隣接海域までを網羅する3次元解析モデル(広域モデル)がコンピュータ上に構築されています。地形の起伏や盛土・切土といった人為的造成、地下建屋、既設のドレーン設備等のレイアウトが差分格子(グリッド)上に忠実に反映されています。
モデルの校正(キャリブレーション)
構築された広域モデルに過去の観測降雨データを入力した非定常解析が実施されています。得られた地下水位の変動傾向やサブドレン等の実測排水量データが実際の現場観測データと比較され、両者が概ね整合するよう地盤の透水係数等の水理物性パラメータが最適化・同定(キャリブレーション)され、解析モデルの妥当性が確認されています。
予測シミュレーションの実施
妥当性が確認された広域モデルの水理地質モデルをベースに、安全対策工事がすべて完了した将来段階の敷地状態を模擬した「水位評価モデル」が構築されています。本モデルでは、安全側の評価を担保(水位を高めに算出)するため、岩盤の透水係数として試験平均値から保守側にバイアスをかけた値(-1σ)が設定されています。さらに、水位勾配が最もきつくなる尾根を解析境界として地表面水位固定の境界条件が与え、定常的な条件下における敷地全体の地下水位分布の予測シミュレーションが実施されています。
文書化(ドキュメンテーション)
モデルの目的、概念モデル、入力データ、校正結果、および予測シミュレーションに基づく設計用地下水位の評価プロセスと結果が体系的に文書化され、審査資料および設計図書として整理されています。
成果物
《成果物1》地下水位低下設備設置状態における3次元解析モデル図
水位評価モデルにおける3次元解析モデル図。本モデルは、水位勾配が最もきつくなる尾根を境界として地表面水位固定の境界条件を設定し、さらに主要な地下構造物(原子炉建屋、制御建屋、サブドレン等の地下水位低下設備)を緻密に再現した3次元解析モデルの鳥瞰図[iii]です。

▲ 図1 水位評価モデル鳥観図
《成果物2》設計用地下水位の設定において参照する敷地の地下水位分布
水位評価モデルを用いた予測解析(低下設備機能維持時)により得られた、敷地内の地下水位分布コンター(等高線)図。これらを耐震設計や液状化影響検討において参照する「設計用地下水位」として設定されています。

▲ 図2 設計用地下水位の設定において参照する敷地の地下水位分布(定常解析)
[i] 東北電力株式会社(2021)「女川原子力発電所第2号機 地下水位低下設備の設計方針について」, 2021年7月,
https://www.tohoku-epco.co.jp/electr/genshi/safety/topics/pdf/20210706_03.pdf
[ii] 長谷川 琢磨(2006)「地下水流動解析のガイドラインに関する調査」, 日本地下水学会誌, 第48巻第2号, pp.75-86
[iii] 東北電力株式会社(2021)「女川原子力発電所第2号機工事計画審査資料 補足-600-1 地盤の支持性能について」,
原子力規制委員会 新規制基準適合性審査に関する事業者ヒアリング 第136回 資料, 2021年5月19日,
https://www.da.nra.go.jp/view/NRA024005833?contents=NRA024005833-002-008
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