FULL ASSESSMENT
#地下水資源
秦野市:持続可能な総合水資源管理のための「はだの水循環モデル」の活用
プロジェクトの背景
神奈川県秦野市は、丹沢山地と渋沢丘陵に囲まれた盆地であり、地下に膨大な地下水を蓄える「天然の水がめ(地下水盆)」を有しています。古くから湧水群が名水百選に選定されるなど、地域住民の生活や産業を支える貴重な共有財産として地下水が利用されてきました。しかし、過去には無秩序な地下水揚水による水収支の悪化や、化学物質(テトラクロロエチレン)による地下水汚染を経験したことから、水量と水質の双方を科学的根拠に基づいて総合的に管理する重要性が強く認識されてきました。
平成22年には水循環モデルが構築されたものの、深度100m以深の深部地質構造に関するデータが不足しており、深部のシミュレーション精度には推定に頼る部分が大きいという課題がありました。近年、長尺ボーリング調査や微動アレイ探査により、地下400~500mに及ぶ深部帯水層や遮水層(吉沢ローム層)の広がりといった新たな水理地質学的知見が得られたことを受け、これらを反映した最新の三次元水循環モデルを再構築し、科学的かつ持続可能な水資源管理体制を確立することを秦野市では目指しています[i]。
プロジェクトのアプローチ
本業務では、秦野盆地における地下水位の変動や水無川に見られるような地表水流量の減少を、局所的な現象ではなく、盆地全体の河川水・地下水の動的な関係(水循環)として捉えました。過去の過度な水利用や地下水汚染の経験を踏まえ、健全な水循環の維持と持続可能な地下水マネジメントを達成することを目指しています。そのために、「調査」「モデリング」「シミュレーション」「情報開示・意思決定」の4つのプロセスが自律的に機能する循環型のアプローチに取り組みました。
最新データに基づく地下構造調査(調査)
長尺ボーリングや微動アレイ探査、水質分析を統合し、地下400~500mまでの深部帯水層や吉沢ローム層(遮水層)の分布、地下水涵養機構の実態を把握しました。
三次元水理地質構造の構築(モデリング)
秦野盆地全域を約430万格子の高解像度モデルで構築。調査情報に基づく水理地質モデルを組み込んでいます。実揚水量などの水利用を反映し、観測データとの検証により地下水位を高精度に再現しています。
水利用や人工構造物の影響評価(シミュレーション)
「はだの水循環モデル」を新設井戸の揚水影響評価や新東名高速トンネル掘削影響に適用したシミュレーションを実施しました。
科学的知見の提示と合意形成の支援(情報開示・意思決定)
影響範囲や水頭変化のデータを科学的根拠として分かりやすく提示し、計画策定や関係者間の迅速な意思決定を支援しました。

▲ 図1 はだの水循環モデルの水理地質構造
揚水影響シミュレーション解析結果(適用事例)
構築したモデルを用い、新設井戸(合計6,000 m³/日)による浅部・深部帯水層それぞれの揚水影響を評価しました。遮水層(吉沢ローム層)で仕切られた深部帯水層からの揚水は、周辺からの地下水流入(涵養)が少ないため影響範囲が広域に及ぶことを解明しました[ii]。この定量的な予測結果は、深部帯水層への過度な依存リスクを示す科学的根拠として評価され、持続可能な「地下水保全管理計画」を策定する際の重要な判断材料として活用されました。


▲ 図2 新規揚水による全水頭の影響範囲評価
(上段:浅部帯水層から揚水した場合 下段:深部帯水層から揚水した場合)
[i] 秦野市(2021)「秦野市地下水総合保全管理計画」
[ii] 石井大樹, 田原康博, 吉田堯史, 才田進, 谷芳生(2022)「秦野盆地における水資源管理のための三次元水循環モデリングの適用」, 日本地下水学会2022年春季講演会講演予稿, pp.66-71.
プロジェクトを
加速させる
水問題に関する課題・お見積り・GETFLOWS導入など
お気軽にご相談ください。
課題のヒアリング・お見積もり
GETFLOWS導入相談など、
お気軽にご相談ください
