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水循環解析で支える自然関連開示

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#TNFD

水循環解析で支える自然関連開示

森林・拠点・流域の水のつながりを見える化。
自然関連開示を支える「水のつながり」

自然資本や生物多様性に関する企業開示では、事業活動がどのような自然の恵みに支えられ、また周辺環境にどのような影響を与え得るのかを、地域や拠点に即して説明することが重要になっています。 

水についても、取水量や一般的な水ストレス指標だけでは、拠点固有の水源や取水影響まで捉えにくい場合があります。 

森林に降った雨がどのように地中へ浸透し、地下水や河川水として流れ、事業拠点や地域の水利用とどのようにつながっているのか。こうした水のつながりを把握することが、自然関連開示における説明の根拠の一つとなります。 

公開された企業開示の中でも、水循環解析は、森林の水源涵養機能、事業拠点の地下水利用、取水による周辺影響、流域・集水域単位の水ストレス評価などに活用されています。 

水循環解析で明らかにできること

水循環解析では、対象地域の地形、地質、土地利用、植生、気象条件、水利用などの情報をもとに、地表水と地下水を一体的に捉えます。 

これにより、森林が水を蓄え、地下水や河川水を支える機能、事業拠点で利用する水の供給源、地下水や地表水の流動経路、取水量と水源涵養量の関係、取水による周辺地下水位への影響、集水域・流域の区分などを定量的に示すことができます。水ストレスについては、これらの解析結果に水需要量や水資源量などの情報を組み合わせて評価します。 

これらの情報は、自然関連開示における依存、インパクト、リスク、機会を説明するための根拠として活用されています。 

事例紹介

森林の水源涵養機能

王子ホールディングス様は、国内の「王子の森」約18.8万haを対象に、森林が持つ公益的機能を経済価値として評価しています。同社は、森林を木材生産の場としてだけでなく、生物多様性、土砂流出防止、水源涵養など、多様な価値を持つ自然資本として位置づけています。 

その中でも水源涵養は、森林の土壌が降水を蓄え、河川へ流れ込む水の量を平準化し、洪水や渇水を防ぎ、さらに水質を浄化する働きとして説明されています。王子の森は、木を育てるだけでなく、地域の水を蓄え、整え、支える森でもあります。 

王子HD様は、国内の王子の森18.8万haの水源涵養量を、国土情報プラットフォームを活用し、地表水・地下水のデータから解析しています。その結果、王子の森における地表面からの浸透量は510万m³/日と算出されました。これは、1人1日300Lで換算すると、1日当たり約1,690万人分の生活用水に相当する量です。 

森林の水源涵養という見えにくい機能を、地表水・地下水の流れと具体的な水量で表すことで、王子の森が持つ自然資本としての価値が、より直感的に伝わる形になっています。水循環解析は、森林と水の関係を「説明できる価値」として可視化するための重要な手段になります。 

▲ 出典:王子ホールディングス株式会社「国内社有林の経済価値評価の結果と定量化プロジェクトについて」(2024年9月11日)https://www.ojiholdings.co.jp/news/detail_001682.html 

工場で使う地下水の由来と周辺影響を把握する

製造拠点の地下水利用を評価するうえで重要なのは、取水量だけではありません。どの地域から地下水が供給され、周辺の森林・地層・流域とどのようにつながっているのかを把握することで、事業活動と地域の水循環との関係を具体的に説明できます。

富士フイルムホールディングス様の開示事例では、神奈川事業場足柄サイトおよび富士宮事業場を対象に、GETFLOWSによる水循環解析が活用されています。気象条件、植生、土地利用、地質構造などを組み込んだ三次元モデルにより、雨水の浸透、地下水の流れ、河川への流出を一体的に再現し、拠点周辺流域における水の供給性と操業との関係を評価しました。

足柄サイトでは、使用する地下水が周辺の社有林や上流の山林から供給されていること、取水が周辺地域の水の供給性に過剰な影響を与えていないことが整理されています。富士宮事業場では、富士山を上流とする豊富な地下水が、地域の地層特性により事業所周辺で湧き出しやすい構造にあり、水の枯渇リスクは極めて低いと報告されています。

このようにGETFLOWSは、工場の地下水利用を単独の操業データとして扱うのではなく、森林、地層、流域、地下水流動を含む地域の水循環の中で捉えます。地下水がどこから来て、どのように拠点を支え、周辺地域の水環境とどう関係しているのかを可視化することで、自然関連開示における説明の根拠づくりに活用されています。

▲ 出典:富士フイルムホールディングス株式会社「TNFD Report 第2版 2026年1月発行」https://www.fujifilm.com/files-holdings/ja/sustainability/report/2026/tnfd_report2026.pdf

取水影響と水ストレスを評価する

NGK株式会社(旧・日本ガイシ株式会社)様は、MS&ADインターリスク総研株式会社様と連携し、水ストレスが高い地域に位置し、主に地下水を利用するNGKセラミックスメキシコを対象に、GETFLOWSによる詳細評価を実施しました。気象、地形、土地利用・土地被覆、地質、水利用のデータを組み込んだ水循環モデルから、取水する地下水の集水域と、取水による影響範囲を特定しています。 

取水による地下水位低下のインパクトは、「取水がある場合」と「取水がない場合」の地下水位を比較して評価しました。拠点を中心に最大約0.15m、おおむね半径1kmの範囲で約0.1mの地下水位低下を算出。地域の地下水位の季節変動幅が2~6mであることと照らし合わせ、取水による地下水位低下のインパクトはおおむね限定的と評価しました。 

さらに、地下水と地表水の流動経路を三次元で再現し、拠点が西側の山地部から東へ浸透する水を取水していることを明らかにしました。水ストレスのひっ迫度は、集水域で5段階中3、拠点と下流域を含む広域な流域で4となりました。この水ストレス評価は、拠点の実際の取水量ではなく、立地地域全体の水資源状況を対象としています。 

拠点の取水が周囲に与える影響と、地域全体の水資源のひっ迫度をそれぞれ捉えることで、中長期的な事業継続に向けて、今後の水資源管理の取り組みを検討する方針です。NGKグループは、すでに工場内で利用した水の再利用に取り組んでおり、今後は解析結果と実際の取水データを照らし合わせながら、集水域だけでなく流域全体の水ストレス低減につながる取り組みを検討しています。 

▲ 出典:日本ガイシ株式会社(NGK)「TNFD提言に基づく情報開示」https://www.ngk.co.jp/sustainability/environment/tnfd.html

開示に活用される主な情報

公開された事例では、水循環解析の結果が、森林の水源涵養量、森林管理による涵養量への効果、取水量と水源涵養量の比較、拠点で利用する地下水の供給源、地下水・地表水の流動経路、取水による地下水位への影響範囲、集水域・流域単位の水ストレスなどとして、自然関連開示に活用されています。 

水循環解析は、単に水リスクの高低を示すものではありません。森林、拠点、流域の水のつながりを可視化し、企業活動と自然資本との関係を説明するための情報を提供します。

水循環から、自然資本との関係を説明する

自然関連開示では、自然への依存、インパクト、リスク、機会と、それらを管理するプロセスを、場所に即して説明することが求められます。 

水循環解析は、森林が水を育む機能、事業拠点が利用する水の供給源、取水が周辺環境に与える影響、流域全体の水資源状況を、地表水と地下水を含む水の流れから明らかにします。 

見えにくい水のつながりを可視化することで、企業が自然資本との関係を理解し、説明し、管理するための科学的な検討・説明を支える情報基盤となり得ます。 

開示事例  

水循環解析を活用した自然資本・TNFD関連の主な公開情報です。ニュースリリースや個別Webページなども含みます。 

・三井物産株式会社|「三井物産の森」におけるLEAPアプローチ 

・東急不動産ホールディングス株式会社|TCFD・TNFD提言等に基づく統合開示 

・王子ホールディングス株式会社|国内社有林の経済価値評価の結果と定量化プロジェクトについて 

・富士フイルムホールディングス株式会社|TNFD Report 2026 

・日本ガイシ株式会社(NGK)|TNFD提言に基づく情報開示 

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