東京の水循環を描き出す武蔵野台地モデル

「武蔵野台地」の背景

多摩川以北(以南は多摩丘陵)に分布する武蔵野台地は、荒川低地西縁までの範囲に及び、関東ロームを主体とする数段の台地面で構成されています。台地上の中小河川は、北西から南東に延びる尾根状地形で南側の多摩川水系と北側の荒川水系に分けられます。武蔵野台地を広く覆っているのは、関東ローム層(解析領域内に分布するのは武蔵野ローム層、立川ローム層)、凝灰質粘土層、および段丘砂礫層の組み合わせである段丘堆積層です。この段丘堆積層が浅層地下水の有力な帯水層となっています。
武蔵野台地は戦後復興期から高度経済成長期にかけて都市化が進み、河川へ生活用水が流れ込み水質を悪化させた一方、流量が増えました。その後、下水道・雨水排水施設等整備事業が進み、河川水の水質は改善されてきたものの流量は減少傾向が進みました。このため、河川によっては、秋季~冬季にかけて水枯れが発生する区間が増えてきた経緯があります。水枯れの原因には、以下のようなことが挙げられています(「残堀川河川整備計画 平成19年6月 東京都」参照)。

  • 都市化の進展により雨水が地下に浸透し難くなったこと
  • 下水道が普及して河川への排水が減ったこと
  • 河川改修工事により表層(ローム層)を流下していた河道を掘り下げたため、流水が礫層に伏流し易くなったこと

武蔵野台地モデルを用いた水循環特性評価

解析モデル範囲は、東側を東京湾、南西側を多摩川、北東側を荒川、北西側を入間川およびその支川流域に囲まれた東京都と一部埼玉県にまたがる約2,000km2です。平面格子モデルは、図-1に示すように格子数は23,618です。また、3次元格子モデルは、図-2に示すように深度方向に30層(モデル底標高-2,500m)で総格子数708,540です。

図-1 解析領域と武蔵野台地の平面格子モデル
出典:「10.武蔵野台地水循環特性調査解析」(一部加筆)
図-2 武蔵野台地の3次元格子モデル(地形)
出典:「10.武蔵野台地水循環特性調査解析」(一部加筆)

 

水循環特性その1<都市化が地下水に与える影響>

人工的な水利用や下水道・雨水排水施設等が無い状態の自然流量の復元解析結果と現在の水利用を考慮した現況再現解析結果から地下水位計算結果の差分をとることにより、人工的な水利用の影響を見た地下水位差分コンターを図-3に示します。これは、地下水揚水等の水利用によって低下した水位を示しています。武蔵野台地中央部では、5~10mの地下水位低下が生じており、このような浅層地下水面の低下は、河川への湧水低下や流量に影響を及ぼしている可能性があります。

水循環特性その2<武蔵野台地の河川流量維持力>

主な河川のいくつかの地点について、降雨を停止した場合の河川ごとに最も流量低下が早い地点についての流量低減傾向の違いを比較したものを図-4に示します。段丘上で河床の削り込みが比較的深い河川である黒目川、白子川、石神井川等は、流量が他の河川に比べて多く、水涸れが発生し難くいものと考えられます。一方、河床の削り込みが浅い河川である空堀川、奈良橋川、残堀川、仙川等は流量減衰が早いことがわかります。

図-3 地下水位差分コンター(現況再現-自然状態) 図-4 降雨停止後の主な河川別流量低減傾向の比較
出典:「10.武蔵野台地水循環特性調査解析」(一部加筆)

武蔵野台地モデルの今後の活用について

弊社は、平成27年度に東京都土木技術支援・人材育成センターから業務を受託し、武蔵野台地域を中心に水循環特区性を調べました。武蔵野台地モデルを解くことで、都市河川の流況を創り出している背景の一端を視ることができました。
今後、武蔵野台地モデルは、流量確保のため、水涸れを起こす原因を把握し、的確な対応策を検討するためのツールとしての活用。さらに、平成26年に制定された水循環基本法と水循環基本計画(H27年公示)が進める“流域連携の推進”や“水の適正かつ有効な利用の促進(持続可能な地下水の保全と利用)”するための合意形成に不可欠な施策効果評価データ等の提供に寄与することが期待されます。

なお、本業務紹介資料は、平成29年度東京都土木技術支援・人材育成センター年報の「10.武蔵野台地水循環特性調査解析」を参考にさせていただきました。

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